「なんだこの映画は?」
「画家の映画だな。一応実話が元になっているという。どこまで実話か知らないけどな」
「それで、何がビッグ・アイズなんだい?」
「目の大きな少女画を描く女性がいて、夫から逃げたのはいいが、新しい夫が勝手に自分の名前で売りまくって、真の作者は隠されていたという話だ」
「それで君の感想は?」
「目の大きい少女画のポスターを刷ったら飛ぶように売れたって、そりゃ日本の【萌え】に原形みたいな映画だろう。こっちは日本のオタクよりも先にやってるんだぞ、って言われた気がした。気のせいだろうがね」
「日本の誇る【萌え】も、それほど大したことはないってこと?」
「50年代60年代70年代のいろいろなものを見ていると、けっこうオタク文化の原形的なものを発見するよ。あれは誇るに値しない。不連続で発明されたものでもないし、突然産まれたものでもないが、ルーツは無かったことにされて隠蔽されている」
「問題は映画そのものだが、どうなんだ?」
「悪辣な亭主を最後は法廷でぎゃふんと言わせる痛快映画にはなっているよ。最初の亭主と作った娘は可愛いしな」
「そうか」
「まあ、それはそれとして、ポーズして途中でTwitterを見たら目の大きな少女がこちらを睨んでいて焦ったよ」
「それ、よくあるただの萌え絵だろ」